AxialAxial

声高らかに
夢を語れ

武士俣 潤一
2002年入社 
加食チーフバイヤー

元・内気な男。

幼少期は、とても内気な人間だった。家に帰ればTVかゲーム。中学からはじめたバレーボール部でキャプテンを務めたときも、大きな声を出すのが恥ずかしくて、部員たち一人ひとりに駆け寄っては、「次はアタック練習します」と耳元で囁くことが精一杯だった。そんな自分を変えるきっかけになったのは、とあるTV番組で見た海外の風景。「世界は、僕が思うよりもずっと広い。縮こまっていてはダメだ」。海外へ憧れを抱き、大学進学の際に選んだのは、英米語学科だった。そこで僕は、ちょっとした大学デビューを果たす。英語習得のために人と話すことが増え、アメリカへの留学も経験し、現地人のオープンな性格にも感化されて、次第に心を開くようになっていった。「海外で仕事がしたい」。そう思うようになったのも自然の流れだった。しかし、そのときはまだ、本当に海外で仕事ができるとはつゆほども知らなかった。

香辛料の匂いが鼻をさし、聞こえてくるのは中国語。目に飛び込んでくる目新しい街並み。入社当初からの念願だった海外での仕事に、興奮を抑えきれずにいた。菓子バイヤーになっていた僕は、その日、中国・広州で開かれる貿易展示会を訪れるため、空港へ降り立った。あらゆる食品メーカーが一同に会する展示会。巨大な会場に所狭しとブースが並ぶ光景は圧巻だった。PB(プライベート・ブランド)商品の開発のため、目当ての商品を取り扱うメーカーのブースを回り、原材料や味、原価を比べる。そして、ともに商品開発を手がけるパートナーとなり得るかどうか、ときに英語で、ときに通訳を介して中国語で交渉し、見極める。一日で3万歩の距離を歩き回り、ホテルに帰り着いたときには、足は棒になっていた。その後、マーチャンダイザー※になりドイツ、イタリアと2ヶ月に一回のペースで立て続けに海外へ足を運び、興奮指数はその度に更新されていった。

※マーチャンダイザー:プライベートブランド商品の開発者。
原料調達から消費までのマーチャンダイジング活動の責任者。

現状を、否定しつづける。

マーチャンダイザーとして、数々の商品を生み出してきた。とりわけ社内を賑わせたのは『カカオ香るミルクココア』だ。それまで、ココアといえば一袋300gで売価298円というのが通説。市場では、ミルク感が強い甘いココアが、ほぼ一強だった。商品の開発に際し、マーチャンダイザーの仕事はいつも、現状を否定するところからはじまる。「なんで300gなんだ?」「この甘さでいいのか?」。改善活動の要領で、目指すべき指標を導き出していく。しかし、並大抵の施策では、この牙城は崩せない。誰もが、開発は失敗に終わると予想していた。当事者である僕でさえ。

消費者のモニタリング調査結果では、平均して週に5杯のココアを飲むことがわかった。1ヶ月で飲み切れる容量を計算すると、240gが妥当。容量を減らした分、売価は248円にまで安くできる。お客様にとっては、1ヶ月で使い切れて余らないし、一目に安い。さらに、あえて甘さを抑え、カカオの風味を立たせることで、競合とは反対軸を目指した。そうしなければ、二番煎じになってしまうからだ。また、味だけでなく材料費や人件費などのコストにも気を配らなければならない。メーカーの担当者様と何度もすり合わせを行い、少しずつ、求めるココアを具現化していった。甘さ、ミルク、カカオのバランスを調整するために、一日中、工場にこもることもあった。そうして約3年。ついに『カカオ香るミルクココア』は誕生した。しかし、お客様が商品を手に取り、味わってもらうまでがマーチャンダイザーの仕事。まだ完成とは言えなかった。

語らない夢は、叶わない。

「1ヶ月で10万袋を売ろう」。ふと、そんな構想が持ち上がった。一番売れる商品でも年間9万袋が関の山。だが、一度目標を決めれば、達成するために何ができるかを全力で考え、全力で実行するのがAxialの遺伝子だ。社をあげて、一世一代の大規模販促を展開することになった。営業企画部とも協力し、おいしいココアの淹れ方の動画を制作し、店舗の売り場で流すことで興味を喚起。新潟で一番刊行数の多い雑誌とタイアップし、さらなる認知を図る。そして、店頭での大試飲会を開催し、飲んだ感想を特大の模造紙に書き込んでもらうなど、お客様をも巻き込んでいった。そんな大規模販促の結果、目標としていた10万袋を売り上げてしまったのだ。

思えば、入社当初から、先輩や周囲の人たちに「海外に行きたいです」と幾度となく言い続けていた。そのおかげか、海外で商品取引をする仕事を経験することが出来た。そして、どんな仕事においても、自分の目標を周囲に語りつづけた。そうすると、いつでも誰かが手を差し伸べてくれた。1ヶ月で10万袋という販売数を達成できたのも、僕一人の力じゃない。たえず周りに働きかけ、みんなが協力してくれたからこそだ。マーチャンダイザーから、加食チーフバイヤーになり、部下を持つようになったいま。自分が得た経験からメンバーに伝えられることはたくさんあるだろう。でも、一番伝えたいのは、「技術なんて後からついてくる」ということ。まずは、「自分が何をしたいのか?」「目標は何か?」それが大切だと思う。語らなければ、夢は叶わない。これからも、声高らかに、語り続けていきたい。

Be a Performer.

セッションしていると思う瞬間は?

どんなに良い商品を開発したり仕入れても、実際に売るのは店舗ですし、販促を考えてくれる営業企画の力も必要です。いろんな部署に協力を仰ぎ、一緒に話し合いながら、お客様に商品を手に取っていただくためのアイデアを紡いでいきます。この仕事はひとりで完結しません。そういう意味でいうと、全てがセッションです。

学生へのメッセージ

まずは積極的に様々な事にトライしてほしい。全てはそこから。もし目標があるなら、それを周囲に言いふらすこと。夢を語り続ける…。そういう人には、必ずチャンスが舞い込んでくるはずです。