AxialAxial

ワット・ア
パンダフル
ワールド

影山 尚美
2006年入社 
ベーカリーバイヤー

まるで、職人技。

素早い手さばきでスポンジケーキに生クリームを塗る。ショートケーキをつくるうえで、ここが一番の難関。パレットナイフで何度も塗り直す。ムラなく均一に。そして出来上がった真白な曲線を眺め、「うまくできた」と胸が踊る。この作業だけみれば、まるで左官職人のようだとふと思う。
父の仕事は大工だった。父の働く姿を見て、物心ついた頃から、職人さんに憧れた。形は異なるけれど、パンやお菓子づくりが趣味になったのも、モノづくりというものに興味をもったからだろう。仕上げのきめ細やかさだけでなく、見えないところにも気を抜かない。なんてことも、父の受け売りだ。つくったお菓子を家族や友達に食べてもらって、「おいしいね」と言われるのも嬉しいけど、それよりも、つくっている瞬間が一番楽しかった。

就職活動にさしかかっても、どんな仕事に就きたいのか、まったく絞れていない状態だった。○○職人と言われるような仕事に憧れはあったけど、好きだったお菓子づくりも趣味の域を超えなかった。もし男に生まれていたら、左官職人もありだったかも。それでも家族や友達に「おいしいね」と言われた喜びが、なんとなく胸に残っていて、唯一、食には興味があった。製造業も考えたけど、小売業なら、直接お客さんの声を聞けるだろう。そう思い、Axialに入社を決めた。仕事が楽しいと思い始めたのは、ベーカリー部門に配属されてから。店舗にあるパン工房で生地を成形し、発酵させ、オーブンで焼く。ここでお菓子づくりの経験が活きるなんて、思ってもみなかった。

パンが膨らむと、
しあわせが膨らむ。

ただ、趣味でやるのと違うのは、人や時間を管理しなければならないことだった。朝の11時ごろまでに60種類ほどのパンを店頭に並べられるよう、時間と向き合い、従業員に指示を出す。店舗によって環境が異なるため、本部から与えられるマニュアルも日々改善していかなければいけない。
チーフを務めていたとき、食パンの焼き色にムラが出てしまうという課題があった。焼き色にムラがあると味にも影響するし、見た目も悪い。なんども焼きなおして試行錯誤するうちに、生地の発酵時間が同じでも、個体によって差が生じてしまうことがわかった。時間だけでなく、発酵で膨らむ大きさにも注意が必要。この課題は、生地の大きさを測る専用器具を自前でつくり、改善することができた。

ベーカリーバイヤーになって、まだ一年にも満たないけど、店舗での長年の経験が活きている。現場を知っているからこそ、売れ筋やお客様の求める商品もわかるし、作りやすいレシピなど従業員の求めることもわかる。それらを考慮しながら、新しい商品を考えている。新商品を出すのは週に一回、木曜日。なるべく旬な食材を使い、季節や行事などに合わせ、メーカー様と打ち合わせをしながら向こう1ヶ月の新商品を決めている。毎年同じ商品もあるが、全く同じものは出さない。昨年のデータを参考にしながら、トッピングやクリームの量などを変えて、毎年改善している。商品を改善するのは一年に一度とは限らない。たとえば、「ミニパンの詰め合わせ」の中身のフレーバーは定期的に変えている。ミニクロワッサン、ミニメロンパンなど、お子さんが好きそうなフレーバーや色合い、季節によって、りんごパン、チョコパンを入れるなど、飽きられないようにしている。

まだまだ発酵が、
止まらない。

本部異動になったときは、まるで転職したような気分だった。お店でパンをつくるのと、頭の中でパンをつくるのは全然違う。それに、お店で働く方が自分の性に合っているとも思う。でも、この歳になっても新しいことに挑戦でき、まだまだ学べることが山ほどあるんだと思うとワクワクする。ベーカリーのスペシャリストとも言える上司から教えを請うことができ、勉強の日々。最近教えてもらったのは、数値分析の手法。昨年の売上高など、一つの事象だけでなく、売り上げに占める割合、店舗、客層、時間帯、値下げした金額やさまざまなデータをもとにして、次の商品開発に活かしている。

いろんなことに無知で、勉強にも苦手意識があった。そんな私が、いまパン製造技能士という国家資格を取得するために勉強をしている。パンをつくる技能には自信があるが、問題は筆記試験だ。製造工程や安全衛生、設備管理といった知識も必要になる。また商品改良のアイデアを得るために、パン屋を巡って味を比べたり、ラベルを見て、どんな食材を使っているかをチェックしている。そして、こうしたらもっといいんじゃないかな、こういう商品があったらいいな、美味しいんじゃないかな、とイメージを膨らませる。パンの世界は奥深い。学ぶことは、たくさんある。私はまだまだ、発酵途中だ。

Be a Performer.

セッションしていると思う瞬間は?

社内外の方々と「こんな具材を入れてはどうか」「もっとクリームを足してはどうか」、と話し合いながら商品開発を進めます。バイヤーだけではできません。自分が想像していたよりも美味しい商品が出来上がったとき、さまざまな部署の協力があったからこそだと痛感します。

学生へのメッセージ

自分が少しでも興味があることにどんどん挑戦していってほしいと思います。色々なことに挑戦でき、可能性を広げられる会社が見つかるといいですね。